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特許調査の方法 ~特許調査の見える化~ 第2回

 

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3. 調査観点作成に関する具体例

3-1. 調査観点の整理が必要な理由(実例)(1/5)

同じ用語でも、技術分野により、意味するものが異なることがある。

 

(例)経路設定装置

・通信システムでは”ルータ”を指す

・交通システムでは”カーナビ”や”道案内”を指す

 

依頼者と調査者の間の精通分野によって、イメージしているものが異なる可能性がある。

通信システムの特許分野を調査しても、カーナビや道案内に関する公報は発見できない。

双方の分野を調査しても、一方は無駄である可能性もある。

 

⇒誤った分野の調査や必要のない分野の調査を実施するかもしれない

 

3-1. 調査観点の整理が必要な理由(実例) (2/5)

依頼資料に書かれていない技術前提があることもある(立場の違いによる齟齬)

 

(例)画像監視における事象発生の予兆検知方法を調査する

・依頼側

カメラによる事象検知をして記録するシステムで発生後では、発生中の記録が一部欠如するため、それを解消するため、予兆を検知し、記録のタイミングを早めることを検討したいと考えた。この検討のため従来技術を把握し、様々な手段での予兆検知方法を調査したいと考えた。

 

・調査側

従来より、同システムに関する特許調査に依頼を受けており、全ての事象の検知は、画像により実施することを前提としていた。今回も、画像による予兆検知が前提と考え、画像に加え、各種センサや音や環境変化により、予兆をとらえる方法は除外して報告した。

 

依頼側は、今回開発予定のシステムでは、画像にとらわれない色々な方法を想定していたが、

画像以外の事例を調査で得ることができなかった。

 

⇒立場の違いや前提条件の伝達不足で齟齬が生じることがある

 

3-1. 調査観点の整理が必要な理由(実例) (3/5)

技術分野により、優先される常識が異なる事項があり、これが発明(技術)の理解に支障となることがある。

 

(例)システムダウン時の再立ち上げ

・通信システム:繋がることが優先

災害等緊急の通話がつながらなかったら利用者の命にかかわる。接続を間違ったら掛けなおせばいい。

 

・決済システム:誤ることは許されない

間違った決済が行われれば、利用者が大きな損害を被り、損害賠償も発生するかもしれない。

 

・優先される常識の前提が異なる技術の事例は、類似のことを実施していても、当てはまらないかもしれない。

・コンピュータシステムの特許分類で、再立ち上げの事例を探しても、通信システムでの重要視される課題を解決するものは見つけることができない可能性がある。

 

⇒誤った分野の調査に気づかず、重要な事例を抽出できない可能性がある。

 

3-1. 調査観点の整理が必要な理由(実例) (4/5)

技術分野や効果の違いのとらえ方により、調査観点の表現が変わることがある。
(発明として異なるものでも、技術として同じと考える人もいる)

 

技術分野「情報処理装置」

(構成)

1.データ送信開始前にキャッシュ用メモリに展開

2.送信可能状態検出すると

3.送信の実施

 

(効果)

データの送信処理の高速化

技術分野「予約装置」

(構成)

1.大量の予約データを

2.キャッシュ用メモリに展開

3.予約開始検出すると

4.送信を実施

 

(効果)

一斉予約開始時、他装置に先行して多数の予約を成立させる

  

実施している内容が同じでも、効果のとらえ方で、調査観点が変わるケースがある。

上記のどちらもデータのメモリでのキャッシュをするものだが、予約装置では、どんなデータをキャッシュするかが重要である。「予約データ」の表現が必要で、「一斉予約」で勝つための技術の調査が必要。

 

3-1. 調査観点の整理が必要な理由(実例) (5/5)

曖昧な調査観点による調査の事例


(例)製品不良の判断能力の向上を図るため、不良を見つけるのに、人工知能を導入したため、侵害性の調査が必要と判断した。

 

作成した調査観点

(適用技術分野)

XXX製品の不良判定システム

 

(構成)

1.製品の良否を判断する際

2.人工知能を使用する

 

(効果)

製品不良の判断の精度向上

 
実際の導入技術の詳細

実際のシステムは、製品の形状を可視光線でエッジを判定していたものを改善したもので、肉眼でも判定が難しく、システムの自動判定ではエラーが多発していた。

そこで、照射する光線の波長を変えて、特殊な学習方法で境界の検出の精度を向上させることで改善を図っていた。

 

問題点

「光線の波長を変えること」「判定に使った学習方法」をちゃんと特定していないので、「光線の波長を変える物体のエッジを判定する技術」「特殊な学習方法」について単独で権利化されている技術の調査が不十分で、本来、見つけなければならない技術を見つけられない可能性がある。

 

調査観点の作成にあたり、考慮すべき点

製品の不良判定の問題のあった課題を正確に明らかにして、それを解決する構成として、「波長の変更」や「特殊な学習を実施するための構成」を明らかにして調査をすべき。 (課題が何で解決するのに最も重要な構成が何かを明らかにすることで、調査観点の表現は変わったはず)

 

3-2. 調査資料から、調査観点を作成(事例)

事例

強盗にあって、キャッシュカードの暗証番号を教えることを強要され、嘘の番号を教えたため、被害者が報復された事件が多く発生していた。そこで、これを防止するシステムが必要となった。

考案した仕組み

暗証番号に2通りのものを設定し、一方の暗証番号は正規なものとして、普通に認証後のサービスを行うようにする。

他方の暗証番号を使用すると一見、通常のサービスを実施しているように見せ、銀行口座であれば、預金を少なく見せたり、借入ができないようにしてするような実施サービスを制限する。

 

また、それと同時に警察やシステム運用者に通報するようにして、異常の発生を知らせる。2つの暗証番号に関連性がないと、システムでは2つの暗証番号を管理する必要があり、また被害者がパニックで思い出せなくなる可能性もあるので、一方の暗証番号から、連想できるような規則性を持たせ、記憶するのは、1つの暗証番号のみで済むようにする。

ひとつの発明の特定

事例には、「サービスを制限する」「警察に通報する」「正しい暗証番号から、連想できる暗証番号」など、様々なことが書かれれているが、発明の目的が「嘘の暗証番号を教えたことにより、危害を加えられることの防止」であると考えると、「連想できる暗証番号」は関係の薄い内容と考えられる。

「2種類の認証方法があり、一方の認証情報で認証すると通常のサービスを実施し、他方の認証情報で認証するとサービスを制限して、不正利用を通報する」ことが発明であると考えられる。技術分野は「ATMの認証方法」と整理した。

最初に整理した発明の構成
  1. 2種類の認証方法を提供し、
  2. 第一の認証情報で認証すると
  3. 通常のサービスを実施して
  4. 第二の認証情報で認証すると
  5. サービスを制限して
  6. 不正利用を通報する
発明の構成をさらに整理する

1は、2と3の記載と同じ意味を示しているので省略し、

2,3は従来技術で当たり前のことを言っており、

「第二」の記載で「第一」があることはわかるので、省略。

さらに言葉の冗長部分を省略。

発明の構成(最終)
  1. 第二の情報で認証すると
  2. サービスを制限して
  3. 不正利用を通報する
調査観点のまとめ(例)

(適用技術分野)

ATMの認証方法

 

(目的)

嘘の認証情報を教えることで、危害を加えることを防止する

 

(構成)

  1. 第二の情報で認証すると
  2. サービスを制限して
  3. 不正利用を通報する

 

 

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