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調査方針の作成方法(検索式の作成) 第3回

 

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6.調査方針における調査範囲の決定方法

調査方針の中の調査範囲は「主範囲の決定」「主範囲の限定」「調査範囲の補完」の3工程を経て作成します。この工程を経ることで費用対効果を考慮した適切な範囲を実現します。

最終形を得るためには、調査対象件数の評価をしていく必要があるので、実際には、一旦「仮説」として調査範囲を作成し、検索式を作成し、評価を繰り返しながら最終形を目指していきます。

主範囲の決定 【調査範囲の明確化】

調査観点から抽出した「概念」の積などを使った一言で表現できるような調査範囲。

主範囲内の限定 【目標の件数(費用)に近づける調整】

他の「概念」や主要範囲の「概念」の特許分類、実施例など限定のやり方の方針を決め、それに基づき実施。

主範囲で調査対象件数が絞れなかったときに実施。

調査範囲の補完 【調査範囲の適正化】

主範囲での漏れの可能性を減らす。

主範囲に関わらず対象存在の可能性が高い部分の追加。

調査範囲の決定 【仮説→最終形】

費用対効果を考慮した適切な範囲

6-1. 主範囲の決定

調査観点から、シンプルな表現で調査観点を表現し、調査観点から生成した概念の積として表現します。

表現のパターンとして以下のような例があります。

ここで「主構成要素」としているのは、調査対象の最も重要な構成要素だけには限りません。調査対象の公報において、必ず何らかの形で表現されていると思われる構成要素と言う意味で使用しています。

「主構成要素」と他の概念との組み合わせ

「主構成要素」と他の「構成要素」、「技術分野」や「効果」を組み合わせる。

 

例)主構成要素:第二の認証方法を持つ。

    ・第二の認証方法を持つATM →「第二の認証」と「ATM」の積
    ・第二の認証でサービスを制限 →「第二の認証」と「サービス制限」の積
    ・第二の認証を持つものについて、他の「構成要素」「技術分野」「目的」で限定した範囲を調査範囲とする
     →「第二の認証」と他の概念との積
 
「技術分野」と「効果」の組み合わせ

「主構成要素」と言えるものがなかったり、表現が複雑なときに有用。

 

例)ATMでの犯罪防止策 →「ATM」と「犯罪防止策」の積

 

6-2. 主範囲の限定

主範囲として設定した範囲の調査対象件数が膨大なとき、より調査範囲を狭くするため、他の要素との積を使って件数を絞り込む必要があります。

その際、使える候補としては、以下のようなものを考えられますが、これに限るものではありません。

他の「概念」を使用

主範囲の限定に使用していない他の概念を使用。

複数の限定パターンを用意し、一部だけを深堀しないようにすることが必要。

 

主範囲の「概念」の特許分類や実施例

より可能性が高い部分を特定するため、主範囲の一方を構成する概念を特許分類や実施例にするパターンを1項に加えることも検討できる。

特許分類が付与されているということは、より可能性が高い部分といえる。また、その技術が通信プロトコルなどを前提としたり、特徴的な方式を前提としている場合など、その名前による限定も効果がある。

 

実施例での限定候補の事例)

  通信方式:SMTP、RTPやそのフルネーム

  画像圧縮方式:MPEG4、JPEG 2000、H.246など

  深層学習:GAN、CNN、RNNなど

 

キーワードの範囲を限定

キーワードやキーワードの組み合せを全体に対して使うとノイズが多くなるので、

以下のような限定も検定可能

 

①検索範囲

 「全文」か「請求項」までか、など

 

②キーワード間の演算

 積、近傍検索(近傍のワード間の文字数、単語数の制限)

 

③特許分類による限定

 調査対象の取りうる特許分類の範囲を限定する。

 IPC,FI,CPCなどでは、最低でもメイングループ以上で表現したり、Fタームでは テーマコード全体としたものとの論理和など広い範囲にすることが望ましい。

 

6-3. 調査範囲の補完

「主範囲の決定」「主範囲の限定」により、漏れの可能性が出てくるので、それに対処する対策を取る。

すべてに対策を取ることは難しいので、漏れが大きいと判断した部分についての対処を優先させる。

以下に特に対処しておくべき事例を示す。

公報が存在する可能性の大きい部分が調査範囲外になっていないか

重要概念に対応する特許分類やキーワード(実施例)などで限定されるものが少数にも関わらず調査対象外がある。

概念の大半の積を持つ可能性の高い部分が調査対象外となっていないか。

 

「主範囲の決定」にキーワードのみで限定した「概念」が含まれるなら、その対処をしているか

キーワードでの限定ではすべてを網羅できない可能性が大きいので、その「概念」を使用しない限定方法も設ける。

 

「特許分類」で限定した項目の漏れを考慮しているか

例えば、人工知能や機械学習を利用した技術は利用分野の特許分類が付与され、主発明の特許分類が付与されないケースも多い。

そのような場合、キーワードによる限定の方法が適切か、別の限定方法がないかなど。

 

6-4. 調査方針最終形の判断のポイント

当初立てた仮説調査方針が検索式によるブラッシュアップで変わってくるので、最終的に出来上がった内容が正しいと言えるか確認することが必要です。

以下は検証の観点として、確認すべき点を挙げています。

調査方針を規定する技術内容を明確に説明できているか

客観的に見て、行き当たりばったりになっていないことが必要。

方針を明確にすることで正当さを担保する。

 

規定した概念にない用語や特許分類を使用しようとしていないか

使用しなければならないとしたら、調査観点に不十分な点がある可能性が大きく、修正する必要があるかもしれない。

 

例外事項がある場合、その理由を明確に説明できるか

例)ある概念を規定する特許分類で全件調査を調査対象とした。

   ⇒発明の特徴的事象が分類されるもので、件数も少ないからある概念を特許分類のみ規定

   ⇒キーワードでの特定はノイズを多く含み、この特定事項ではキーワードの使用するのは適切

  特許分類でも特定できそうなのにキーワードのみで特定

   ⇒特許分類の特定する範囲は広すぎて、関係のない「XXXX」に関する技術が大半

 

概念を「キーワード」のみで確定した部分の補完はできているか

 キーワードのみで規定する場合は、想定できていない言い回しが存在する可能性も多く、大元の大きな範囲をキーワードで規定している場合は、その補完が必要な可能性が大きい。

想定できる漏れを指摘したとき、その部分を補完するのかしないのか、その理由を説明できるか

どのような調査方針を規定しても完全なものはない。

従って、漏れる範囲が生じるのは必然的であるが、なぜ、その部分を捨てたのかは説明できるようにしておくことも必要。

見つかる確率が高い部分が漏れていないか

 全構成要素の積など、重要な構成を含む複数の構成要素の積で特定できる部分や、重要な構成要素そのものを意味する特許分類など、絶対に調査しておくべき範囲が調査範囲から漏れていないか。

(調査範囲を分かり易くしていく過程で漏れてしまうことがあるので、最終段階で再チェックする)

 

7.まとめ

本資料の内容を実行することにより、調査観点(何を調査するか)から導いた調査方針(どう調査をするか)を明確にしながら、調査対象の公報数を削減していくことが可能になります。

これにより、調査の種類(先行技術調査、侵害回避調査、無効化調査、技術動向分析)や調査対象国を問わず、的確で費用対効果を考慮した調査が実現されます。

 

 

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